「6月23日 4:05pm」

「久々の一日中高校生活。なんかいつもと違う緊張感で、何故だか
心地よかったかな。」
律子は上機嫌でカバン振り回しながら下校していた。
「あっ、そうだ…」
コンビニの前を通りかかった律子は、店内にある情報端末に駆け込んだ。
「確か、コレで申し込みができるのよね…って、あるわね。それじゃ、
プロデューサーを呼び出す理由を何とかすれば、今夜作戦決行ね」


「昨日渡し損ねたプレゼントを、どうやって渡そうか。今日は仕事が
オフだから律子は事務所には顔出さないし…って、今日もファンからの
誕生日プレゼントが届いているから、それを届けるついででいいか…」


「さて、プロデューサーを呼び出す理由をどうしよう。そうね、昨夜の
食事に行き損ねた件もあるし、食事に誘うついでにそのまま、食事帰りに
コンビニに誘導すればいいわね。」


「いきなり顔出すのもな。既に放課後だろうから電話しておくか。」
律子のケータイに電話する。


「ん?誰かしら…って、プロデューサーから!タイミングいいわね、
うふっ」
「もしもし、律子かい。」
「プロデューサーですか?どうかしましたか?」
「今日届いているファンからのプレゼントを、運んでやりたいんだが、
時間の都合を聞いておこうと思ってね」
「今、事務所ですか?でしたら、私、学校帰りで、事務所の近くなので
今から事務所に寄りますよ。」
「じゃ、事務所で待ってるよ。」
電話を切ると、律子はほくそえんだ。
「荷物運んでもらったついでに誘い出せば、自然な流れよね。」


「結構多いわね。」
「それだけ人気があるって証拠だよ。」
事務所の机の上に詰まれたプレゼントの山の前で二人つぶやく。
「それだけプロデューサーの手腕が良かったって事じゃないのかな」
「売り込む素材が良くなければ、売り物にはならないだろう。
何もない状態で売り込むなんて、詐欺じゃないか。」
「確かにそれもそうね。って、褒めてくれているんですか。」
「もう少し、自信にしてもいいと思うだけどな。」
(ここで、俺からのプレゼント渡すには、味気ないよな。もう暫くは
チャンスを伺うか…)
「で、プレゼントは全部かしら?あとは、うちまでお願いしますね」
(とりあえず、どの段階で切り出そうかしら…)
律子は、助手席に座り込んだ。
「おいおい、後ろに座れよ」
「今日は仕事じゃないし、たまにはこっちに座って、走っている景色を
眺めてみたいのよ。オフの時ぐらいはいいでしょ」
「ま、たまにはいいか」
内心、律子が横に座ってくれるを喜んでる俺がいる。