「6月23日10:15pm」

「そうだ、プロデューサー。昨夜言った事覚えてます?」
「えっ、何をだ?」
「コンビニで好きなもの買ってやるって。」
「ああ、それじゃ家に帰る前にコンビニに寄ろうか。」
「それじゃ、有効なんですね。昨夜の言葉は…」
「ああ、かまわないよ」
律子は、助手席でほくそえんだのには気がつかなかった。
まぁ、どうせ、ちょっとした小物を買うぐらいだろうし。


「じゃ、プロデューサー。手続きに時間かかるから、立ち読みでも
しながら、待っててもらえますか」
律子はコンビニの中に入ると、そう言って情報端末に向かった。
何を買うつもりなんだ?
情報端末って事は、コンサートのチケットとかか。ちょっと
高くついたな。まぁ、ここのコンビニならカード使えるから大丈夫だ。
律子の狡猾さを甘く見てたよ。そういう所も含めて、好きになった
のだから、仕方ないか…
ここは苦笑いするしかなかった。


「まだ、受け付けているわよね…とりあえず、プロデューサーの
名前を入れて…住所も入れて…そして、生年月日も入れてと…
そして、同伴者の欄に私の名前と、住所と、生年月日っと…
さて、このレシートをカウンターに出してと…」


「プロデューサー、会計お願いしますね。」
「まったく、狡猾な買い物をさせやがったな。流石は戦略家」
「感心するのは、この後ですよ。すぱっと、支払いお願いしますね。」
「ああ、判ったよ。車に乗ってまってな。」
ポンと、律子に車の鍵を投げた。律子は、それを受取って嬉しそうな…
いや、いたずらっ子が楽しんでるような後姿を見せながら、コンビニを
出た。


「お会計、19万6千円になります。」
「へっ?」
「19万6千円でございます。」
店員がレジに表示された数字を示した。
「お二人様分の旅行の申し込みですので、この値段となります。」
呆然としている私に、店員が説明してくれた。
「あ…あぁ、そう。カード、使えるよね?」
「はい、カードお預かりさせてもよろしいでしょうか。」
目の前で、店員は慣れた手つきで、レジにカードを通す。
「受付チケットを印刷していますので、暫くお待ちください。」
レジから一歩下がって、呆然と印刷が終るのを待つ。
「お待たせいたしました。こちらがチケットになります。
再発行できませんので、お気をつけて保存しておいてください」
「ああ、ありがとう」
チケットを受取ると、真っ先に車に駆け込んだ。


「律子、どういうつもりだ。旅行チケットって。」
「ここで怒鳴ってると痴話喧嘩に思われるわね。車出してください」
「とりあえず、律子の部屋で話をさせてもらおうか。」
そして、終始無言で律子の部屋へ向かう。